膜厚は「1つの値」では決まらない
電気めっきでは、電流が集中する角やエッジに膜が厚く付き、電流が届きにくい内面、袋部、穴の奥は薄くなります。同じ部品の中で、部位によって膜厚が違うのが普通の状態です。
つまり「膜厚8μm」と書いても、どこの8μmなのかが決まっていません。角で測れば合格、袋部で測れば不合格ということが、同じ部品で起きます。指定するのは値だけでなく、測る場所とセットです。
仕様の確認
膜厚は防錆性だけでなく、ねじ、圧入、公差、外観、検査方法に関わります。指定値を決める前に、どの部位で測るのか、図面寸法は処理前か処理後かを整理します。

この処理の基本
電気めっきでは、電流が集中する角やエッジに膜が厚く付き、電流が届きにくい内面、袋部、穴の奥は薄くなります。同じ部品の中で、部位によって膜厚が違うのが普通の状態です。
つまり「膜厚8μm」と書いても、どこの8μmなのかが決まっていません。角で測れば合格、袋部で測れば不合格ということが、同じ部品で起きます。指定するのは値だけでなく、測る場所とセットです。
防錆だけを見れば膜厚は厚いほど有利です。しかし厚くすると、ねじは渋くなり、はめあいはきつくなり、公差の厳しい部位は寸法から外れます。角に厚く乗るぶん、エッジの寸法も動きます。
膜厚を上げる判断は、防錆と寸法のどちらを取るかの判断です。ねじやはめあい部を持つ部品では、そこだけ薄くする、マスキングする、処理後にゲージで確認するといった逃げ道を先に決めておきます。
膜厚の管理値には、最小値で見るのか、平均で見るのか、何点測るのかという幅があります。処理先ごとに標準が違うため、ここを決めずに図面を出すと、各社が自社の標準で埋めます。
検査成績書の提出が要る案件では、測定方法(磁気式か蛍光X線か)、測定点数、測定位置まで指定しないと、出てきた書類が使えないことがあります。
電流が集中する角は厚く、届きにくい内面や袋部は薄くなります。だから測定位置の指定が要ります。
電流が集中して厚く付く。指定より厚くなり、寸法や嵌合に影響することがある。
比較的安定して付く。多くの場合、ここが「代表値」として測られている。
電流が届きにくく薄くなる。防錆が必要な面がここなら、平面の値では保証にならない。
ほとんど付かないこともある。ここを守りたいなら処理そのものの選び直しになる。
確認する項目
同じ膜厚指定でも、部品の機能と測定箇所によって、見積と品質確認の中身が変わります。
| 観点 | 曖昧なままだと起きること | 候補先に伝える情報 |
|---|---|---|
| 図面指定 | 膜厚だけが書かれ、測定位置がないため、処理先が自社標準で埋める。 | 指定値、測定箇所、最小値か平均か |
| ねじ・はめあい | 膜厚のぶん組付けが渋くなり、量産の組立工程で初めて分かる。 | 処理後寸法、ゲージ確認、マスキングの要否 |
| 角・エッジ | 電流が集中して厚く付き、寸法が動く。バリがあると特に顕著。 | 公差の厳しい稜線、前工程のバリ取り |
| 内面・袋部 | 電流が届かず薄くなる。ここが防錆を担う面だと、先に錆びる。 | 防錆を担う面はどこか、その部位の最小膜厚 |
| 後処理・色調 | クロメートの種類で色調が変わり、膜厚の見た目の印象も変わる。 | 三価か六価か、限度見本、現行品 |
| 検査資料 | 測定方法や点数が合わず、提出された成績書が使えない。 | 測定方法、測定点数、測定位置、提出頻度 |
チェックリスト
図面上の膜厚指定(値と、その根拠)
防錆を担う面はどこか
ねじ・はめあい・摺動部の有無
図面寸法が処理前か処理後か
後処理(クロメート)の種類と色調
検査成績書の要否と、測定方法の指定
すべて埋めてから相談する必要はありません。未確定の項目は「未定」「現行品に合わせたい」「顧客指定を確認中」と書けば十分です。 空欄にするより、分からない項目として共有した方が、処理可否と追加確認を早く切り分けられます。
相談文の例
そのままコピーして、図面や写真を添えて送れる文面です。
亜鉛めっきの膜厚について相談させてください。図面上は◯μm指定ですが、測定位置の指定がありません。防錆を担うのは◯◯面で、◯◯部にねじがあります。測定位置と管理方法(最小値か平均か)、ねじ部への影響、検査成績書の測定方法について、貴社の標準を教えてください。
よくある質問
防錆だけを見れば有利ですが、ねじ、はめあい、公差、コストに影響します。角には厚く付くため、稜線の寸法も動きます。防錆と寸法のどちらを優先するかの判断になります。
使用環境(屋内か屋外か、塩害地域か)、現行品の実績、顧客指定、組付け条件を整理して候補先へ相談してください。空欄のまま出すと、処理先の標準で処理されます。
なりません。電気めっきでは電流が届きにくい部位ほど薄くなります。その部位が防錆を担うなら、最小膜厚を指定するか、つきまわりの良い処理(電着塗装など)を検討します。
検査成績書の提出が要る案件では指定してください。測定方法と点数が決まっていないと、提出された書類が社内の基準に合わないことがあります。
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