表面処理の基礎

膜厚とは:どこで測った値を保証するのか

膜厚は、部品のどこでも同じ厚さで付くわけではありません。角は厚く、奥は薄くなります。だからこそ「どこで測った値を保証するのか」を決めないと、同じ部品でも測る人によって合否が変わります。

膜厚計で処理済み部品の皮膜を測定する検査台のイメージ

この処理の基本

膜厚は「一つの数字」ではない

なぜ均一に付かないのか

電気めっきでは、電流が集中する角やエッジに厚く付き、電流が届きにくい内面、深穴、袋部には薄くしか付きません。形状が複雑なほど、この差は大きくなります。

塗装でも同じことが起きます。粉体塗装ではエッジで膜が引けて薄くなり、電着塗装では奥まった面が薄くなります。無電解ニッケルのように、液が触れれば均一に付く処理は例外です。

つまり、「膜厚10」と図面に書いても、それが最小値なのか、平均なのか、特定箇所の値なのかで意味が変わります。

測定位置を決めるということ

図面に膜厚を書くときは、値だけでなく「どこで測るか」を書いてください。防錆が必要な面なのか、はめあいが効く面なのか、外観面なのかで、測るべき場所は変わります。

重要な面が複数あるなら、複数の測定位置を指定します。逆に、機能に関係ない面まで厳しい膜厚を要求すると、コストだけが上がります。

「測定位置が書かれていない図面」は、処理先にとっては条件が決まっていない図面です。見積の回答が「要確認」で止まる原因になります。

厚くすれば良いわけではない

膜厚を上げれば防錆は伸びますが、そのぶん寸法が増えます。ねじは渋くなり、圧入部は入らなくなり、はめあいは効かなくなります。

膜厚を上げる判断をするときは、必ず寸法とセットで確認してください。ねじ部だけマスキングする、ねじを処理後に切り直す、処理そのものを変えるなど、対応の選択肢があります。

測り方によっても値が変わる

膜厚の測定方法にはいくつか種類があります。非破壊で測るもの、断面を切って顕微鏡で見るもの、皮膜を溶かして重量から求めるもの。方法が違えば、出てくる値もばらつきも変わります。

現行品と候補品で値を比べたいとき、測定方法が揃っていなければ比較になりません。業者を変えるときは、測定方法と測定位置も一緒に引き継いでください。

同じ部品でも、膜厚は場所で変わる

電流が集中する角は厚く、届きにくい内面や袋部は薄くなります。だから測定位置の指定が要ります。

断面で見る
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  1. 1
    角・エッジ

    電流が集中して厚く付く。指定より厚くなり、寸法や嵌合に影響することがある。

  2. 2
    平面

    比較的安定して付く。多くの場合、ここが「代表値」として測られている。

  3. 3
    内面・深穴

    電流が届きにくく薄くなる。防錆が必要な面がここなら、平面の値では保証にならない。

  4. 4
    袋部の奥

    ほとんど付かないこともある。ここを守りたいなら処理そのものの選び直しになる。

厚い標準薄い

確認する項目

膜厚を指定するときに決めること

数値だけでは条件になりません。どこを、どう測るのかまでが指定です。

観点曖昧なままだと起きること候補先に伝える情報
どこで測るか測定位置が違えば合否が変わる防錆重視の面、はめあい面、外観面
何を保証するか最小値か平均かで意味が変わる最小膜厚、範囲、除外してよい箇所
どう測るか測定方法で値もばらつきも変わる測定方法、破壊検査の可否
寸法への影響厚くするとねじや圧入部が入らなくなる公差が効く箇所、マスキングの要否
付きにくい箇所内面や深穴は薄くなる袋部、深穴、重なり部の扱い
業者変更時測定条件が違うと比較にならない現行品の測定位置と測定方法

チェックリスト

問い合わせ前に手元で揃えておくもの

膜厚の指定値と、その根拠

測定位置(防錆重視面・はめあい面・外観面)

最小値か、平均か、範囲か

測定方法と、破壊検査の可否

公差が効く箇所

ねじ部、圧入部の有無

内面、深穴、袋部の有無

現行品がある場合、その測定条件

すべて埋めてから相談する必要はありません。未確定の項目は「未定」「現行品に合わせたい」「顧客指定を確認中」と書けば十分です。 空欄にするより、分からない項目として共有した方が、処理可否と追加確認を早く切り分けられます。

相談文の例

膜厚を決めるときの相談メモ

そのままコピーして、図面や写真を添えて送れる文面です。

膜厚の指定について相談したいです。部品形状、防錆が必要な面、はめあいが効く箇所が分かる図面を共有します。測定位置の決め方、寸法への影響、内面や深穴での付き方について確認したいです。

よくある質問

相談前によく聞かれること

膜厚は部品のどこでも同じですか。

同じにはなりません。電気めっきでは角が厚く、内面や深穴は薄くなります。だからこそ測定位置の指定が必要です。

図面に膜厚だけ書けば足りますか。

足りません。どこで測った値を保証するのかがないと、処理先は条件を確定できません。

膜厚を上げれば防錆は伸びますか。

伸びますが、寸法も増えます。ねじや圧入部への影響を必ずセットで確認してください。

業者を変えたら膜厚の値が変わりました。

測定位置や測定方法が違う可能性があります。現行品の測定条件も併せて引き継いでください。

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