耐食性の補強

三価クロメートで耐食性が足りないときの選択肢

三価クロメートへ置き換えたあと、実部品で錆が出た、顧客要求を満たせない、というときの打ち手を整理します。処理を変える前に、どこで錆びているのかと、要求そのものの根拠を確認した方が早いことがあります。

亜鉛めっき部品の錆の出方をエッジや打痕ごとに比較する検査台のイメージ

この処理の基本

処理を変える前に、切り分ける

まず「どこで錆びているか」を見る

エッジ、曲げの外側、打痕、治具跡、ねじの座面、溶接部、水が溜まる袋部。錆びている箇所を具体的に特定してください。全面が均一に錆びているのか、特定の箇所だけなのかで、打ち手がまったく変わります。

特定の箇所だけなら、処理そのものを変えるより、その箇所の形状、工程、梱包、搬送を見直す方が効くことがあります。逆に全面で足りていないなら、皮膜側の補強か、処理の変更が必要になります。

皮膜側を補強する

もっとも一般的なのは、三価皮膜の上にシーラーやトップコートを重ねる方法です。有機系、無機系があり、傷部やエッジの耐食性を底上げできます。ただし、色調が変わる、導電性が落ちる、摩擦係数が変わってねじの締付けトルクに影響する、といった副作用があります。接点、圧入部、締結部がある部品では、これらを先に確認してください。

亜鉛の膜厚を上げるという手もありますが、ねじの嵌合や圧入部の寸法に影響します。膜厚を上げてねじが入らなくなる、という別の問題に置き換わることがあるため、寸法の確認とセットで検討します。

処理そのものを変える

亜鉛ニッケルめっきは、電気亜鉛めっきより高い耐食性が得られるとされ、要求が厳しい部品で採用されています。ただし、対応できる処理業者が限られ、コストが上がります。高強度材では水素脆性を避けるためのベーキング管理も必要です。

カチオン電着塗装や粉体塗装を重ねて、防錆を塗膜側で確保するという考え方もあります。外観と防錆を両立したい場合には有力ですが、膜厚、密着、工程分担、総コストの確認が必要になります。

六価クロメートに戻すという選択肢は、仕向け先の規制と顧客基準の両方で成立し、かつ対応できる処理先が確保できる場合に限られます。この判断は自社だけで決めず、規制と処理先の両方を確認してください。

要求そのものを疑う

図面の耐食性要求が、実際の使用環境から決まったものなのか、過去の図面をそのまま引き継いだだけなのかを確認してください。根拠のない過剰な要求のままだと、コストだけが上がります。

逆に、屋外や塩害環境で使われるのに、試験片ベースの要求しか置いていない場合もあります。この場合は数値を満たしても市場で錆びます。評価方法を実部品に近づけることが先です。

確認する項目

耐食性が足りないときの打ち手

どれか一つが正解ではありません。錆びている箇所、要求、コスト、処理先の確保しやすさを合わせて比べます。

打ち手効くケース確認すること
シーラー・トップコートを重ねるエッジや傷部の耐食性を底上げしたい色調、導電性、摩擦係数、締付けトルクへの影響
亜鉛膜厚を上げる全体的に耐食性が足りないねじの嵌合、圧入部の寸法、コスト
亜鉛ニッケルへ変更要求が高く、電気亜鉛では届かない対応できる処理先、コスト、ベーキング、色調
塗装・電着塗装を重ねる外観と防錆を両立したい膜厚、密着、工程分担、総コスト
六価クロメートに戻す自己修復性が必要で、規制上も可能仕向け先の規制、顧客基準、対応できる処理先
設計・工程を直す特定箇所だけ錆びている水が溜まる形状、異種金属接触、搬送と梱包
要求を見直す要求の根拠が過去図面の引き継ぎだけ実際の使用環境、評価方法、顧客承認

チェックリスト

問い合わせ前に手元で揃えておくもの

錆が出ている箇所(エッジ・打痕・治具跡・溶接部など)

全面か、特定箇所か

現行の処理と後処理、シーラーの有無

図面の耐食性要求と、その根拠

評価が試験片ベースか、実部品ベースか

ねじ・圧入部・接点の有無

許容できるコスト増と納期

仕向け先の規制と顧客基準

すべて埋めてから相談する必要はありません。未確定の項目は「未定」「現行品に合わせたい」「顧客指定を確認中」と書けば十分です。 空欄にするより、分からない項目として共有した方が、処理可否と追加確認を早く切り分けられます。

相談文の例

耐食性が足りないときの相談メモ

そのままコピーして、図面や写真を添えて送れる文面です。

三価クロメート仕様で実部品に錆が出ています。錆が出ている箇所の写真と、現行の処理条件、図面の耐食性要求を共有します。シーラーの追加で足りるのか、処理そのものを変えるべきかを含めて、選択肢とコストの見通しを相談したいです。

よくある質問

相談前によく聞かれること

シーラーを追加すれば六価と同等になりますか。

同等とは言えません。シーラーは傷部の耐食性を底上げしますが、六価の自己修復とは仕組みが違います。使用環境と、傷が入る箇所を前提に評価してください。

シーラーを入れると何が変わりますか。

色調、導電性、摩擦係数が変わることがあります。接点、圧入部、締結部がある部品では、締付けトルクや導通の確認が必要です。

亜鉛ニッケルにすればすべて解決しますか。

耐食性は上がりますが、対応できる処理先が限られ、コストが上がります。高強度材ではベーキング管理も必要です。色調も現行品と変わります。

エッジだけ錆びます。処理を変えるべきですか。

特定箇所だけなら、処理変更より先にエッジの形状、打ち抜き条件、梱包や搬送を見直す方が効くことがあります。まず箇所を特定してください。

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