後処理の選定

六価クロメートと三価クロメートの違い

三価クロメートは六価の置き換えとして普及しましたが、皮膜の働き方そのものが違います。六価は傷ついた箇所を自ら覆い直す性質を持ち、三価にはその機構がありません。同じ耐食性が図面に書かれていても、実際の部品では差が出ることがあります。

六価と三価のクロメート皮膜の色調を比較する検査台のイメージ

この処理の基本

六価と三価は「同じものの置き換え」ではない

六価が持つ自己修復性と、三価にない機構

六価クロメートの皮膜には、水に触れると溶け出す形でクロム酸が残っています。皮膜に傷が入って下地の亜鉛が露出したとき、周囲から溶け出したクロム酸がその部分を覆い直し、腐食の進行を抑える働きがあるとされています。これが自己修復性、セルフヒーリングと呼ばれる性質です。

三価クロメートの皮膜には、この溶け出して働く成分がありません。皮膜そのものの緻密さと厚み、必要に応じて重ねるシーラーやトップコートで耐食性を確保します。傷が入った箇所は、そのまま下地が露出した状態で残ります。同じ「クロメート」という名前で呼ばれていても、守り方が違うということです。

試験片では通るのに、実部品で錆びる

図面や仕様書に書かれる耐食性の要求は、多くの場合、平らな試験片を使った試験の結果を前提にしています。試験片には、打痕もエッジの鋭さも、治具との接触跡も、組付け時の擦れもありません。

実際の部品には、曲げの外側、打ち抜きのエッジ、治具跡、搬送中の擦れ、ねじの締付け座面など、皮膜が薄くなったり傷ついたりする箇所が必ずあります。六価はこうした箇所を自己修復で補いますが、三価は補いません。「スペックは満たしているはずなのに現場で錆びた」という食い違いは、ここで起きていることがあります。

つまり、三価で要求を満たせるかどうかは、数値だけでは判断できません。その部品のどこに傷が入るのか、どこで皮膜が薄くなるのかまで見る必要があります。

「ユニクロ」「クロメート」という表記の混乱

「ユニクロ」「クロメート」「有色クロメート」といった呼び方は、六価が当たり前だった時代から残っています。古い図面に「ユニクロ」とだけ書かれている場合、それが六価を指しているのか、三価への置き換えを前提としているのかは、図面からは読み取れません。

色調も一致しません。六価の有色クロメートは黄色から虹色にかけての干渉色が出ます。三価の有色系はそれに寄せてはいますが、同じ色にはなりません。業者を変えたときに「現行品と色が違う」と言われる原因の多くは、実はここにあります。処理名ではなく、現行品の現物と限度見本で合わせる必要があります。

耐熱では三価が有利とされる

六価クロメートの皮膜は、加熱すると皮膜中の水分が失われ、耐食性と自己修復性が低下するとされています。めっき後にベーキングを行う場合や、後工程で熱がかかる場合は注意が必要です。

三価クロメートは比較的耐熱性に優れるとされ、この点では六価より扱いやすい場面があります。どちらを選ぶにしても、めっき後の工程で熱がかかるかどうかは、処理先へ先に伝えてください。

確認する項目

六価と三価で何が変わるか

耐食性の数値だけを並べても違いは見えません。皮膜の働き方、法規制、外観、処理先の確保しやすさを分けて比べます。

項目六価クロメート三価クロメート
皮膜の働き溶け出したクロム酸が傷部を覆い直す(自己修復性)皮膜自体の緻密さと厚みで守る。傷部は露出したまま残る
実部品での傷エッジ、打痕、擦れをある程度補う傷部から腐食が進みやすい。シーラーで補強することが多い
法規制RoHS、ELV、REACHなどの制限対象。仕向け先と用途で可否が決まる制限対象外として採用されることが多い
外観有色は黄色から虹色の干渉色。旧図面の色調はこれを指すことが多い有色系は寄せているが、同じ色にはならない
耐熱加熱で耐食性が低下するとされる比較的耐熱性に優れるとされる
処理先特化則対応の設備が必要で、扱える業者が減っている対応できる業者が多い

チェックリスト

問い合わせ前に手元で揃えておくもの

図面の「クロメート」「ユニクロ」表記が六価前提か

現行品が六価か三価か(現物・過去の検査資料)

最終製品の仕向け先と製品カテゴリ

顧客のグリーン調達基準の有無

求めている耐食性が試験片ベースか、実部品ベースか

傷、エッジ、擦れが発生する箇所

めっき後に熱がかかる工程の有無

現行品の色調と限度見本

すべて埋めてから相談する必要はありません。未確定の項目は「未定」「現行品に合わせたい」「顧客指定を確認中」と書けば十分です。 空欄にするより、分からない項目として共有した方が、処理可否と追加確認を早く切り分けられます。

相談文の例

六価か三価かを確認するときの相談メモ

そのままコピーして、図面や写真を添えて送れる文面です。

図面には「クロメート」としか書かれておらず、六価か三価かが確定していません。現行品の現物と最終製品の仕向け先を共有しますので、適用される規制と、実部品での耐食性の見方について確認したいです。過去に三価へ置き換えて錆が出た経緯があれば、その箇所も併せて相談します。

よくある質問

相談前によく聞かれること

三価に変えたら錆びやすくなりました。なぜですか。

皮膜の働き方が違うためです。六価は傷部を自己修復しますが、三価にはその機構がありません。試験片で規格を満たしていても、エッジや打痕、擦れがある実部品では差が出ることがあります。シーラーの追加、膜厚、処理そのものの変更まで含めて相談してください。

図面に「ユニクロ」と書いてあります。六価ですか。

図面だけでは判断できません。六価が前提だった時代からの呼び方が残っているため、現行品の現物、過去の検査資料、顧客指定を合わせて確認する必要があります。

色が現行品と合いません。

六価と三価では色調が一致しません。処理名だけで合わせようとせず、現物と限度見本で外観基準を先に決めてください。

三価とシーラーの組み合わせなら六価と同等ですか。

同等と断定はできません。シーラーは傷部の耐食性を底上げしますが、六価の自己修復とは仕組みが違います。使用環境と、傷が入る箇所を前提に評価してください。

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