表面処理の基礎

ショットピーニングとは:叩いて強くする

ショットピーニングは、見た目がブラストとよく似ています。しかし目的がまったく違います。ブラストが汚れやスケールを落とす処理であるのに対し、ショットピーニングは表面を叩いて内部に圧縮の力を残し、疲労破壊を防ぐ処理です。混同すると、必要な処理が指示されません。

ショットピーニングされたコイルばねと歯車。表面に細かいディンプル状の打痕模様が見える検査台のイメージ

この処理の基本

汚れを落とす処理ではない

なぜ叩くと強くなるのか

金属の疲労破壊は、繰り返し引っ張りの力がかかる表面から始まります。微小な亀裂が入り、それが荷重のたびに少しずつ進み、あるとき突然折れます。

ショットピーニングは、硬い球を高速で打ち付けて表面を塑性変形させます。すると表面付近には圧縮の残留応力が残ります。この圧縮の力が、外からかかる引っ張りを打ち消すため、亀裂が入りにくく、進みにくくなります。結果として疲労強度が上がります。

ブラストと混同すると事故になる

どちらも粒を吹き付けるので、仕上がった面は似て見えます。しかしブラストは、汚れ、錆、スケールを落とすため、あるいは塗装の足がかりを作るための処理です。疲労強度を上げる目的では設計されていません。

「ブラストしておいて」と依頼して、疲労強度が必要な部品にブラストがかかった場合、要求は満たされません。逆に、清浄が目的なのにショットピーニングを指定すれば、過剰な処理になります。目的を明示してください。

管理するのは「叩き方」

効果は、打ち付ける球の材質と大きさ、速度、時間、そして部品のどこまで当たったかで決まります。当たっていない箇所には効果がありません。複雑形状では、影になる面に届かないことがあります。

処理の強さと均一性は、専用の試験片を使って管理するのが一般的です。要求される強さと、どの面に効かせたいのかを、図面や仕様書で指示してください。「ショットピーニング」とだけ書いても条件は決まりません。

使われる部品

ばね、歯車、シャフト、コンロッド、板ばね、締結部品など、繰り返し荷重がかかり、折れると重大な結果になる部品で使われます。自動車、航空、産業機械の分野が中心です。

表面は細かいディンプル状になり、面粗さは粗くなります。摺動面や外観面がある場合は、その箇所を処理範囲から外すか、後工程を検討してください。

確認する項目

ショットピーニングで確認すること

「ショットピーニング」とだけ書いても条件は決まりません。どこに、どれだけ効かせるかを指示します。

観点曖昧なままだと起きること候補先に伝える情報
目的ブラストと混同すると要求が満たされない疲労強度か、清浄か、意匠か
処理範囲当たっていない箇所には効果がない効かせたい面、影になる箇所
強さ球の材質・大きさ・速度・時間で変わる要求される強さ、管理方法
面粗さ細かいディンプル状になり粗くなる摺動面、外観面、シール面の扱い
母材硬さや熱処理で条件が変わる材質記号、強度区分、熱処理履歴
後工程処理後にめっきや塗装が入るか後工程、寸法への影響

チェックリスト

問い合わせ前に手元で揃えておくもの

処理の目的(疲労強度・清浄・意匠)

材質記号と強度区分、熱処理履歴

効かせたい面と、外したい面

要求される強さと管理方法

摺動面、外観面、シール面の有無

後工程(めっき、塗装)の有無

過去に疲労破壊が起きた履歴

数量と希望納期

すべて埋めてから相談する必要はありません。未確定の項目は「未定」「現行品に合わせたい」「顧客指定を確認中」と書けば十分です。 空欄にするより、分からない項目として共有した方が、処理可否と追加確認を早く切り分けられます。

相談文の例

ショットピーニングの相談メモ

そのままコピーして、図面や写真を添えて送れる文面です。

ショットピーニングを検討しています。部品の用途、材質と熱処理履歴、繰り返し荷重がかかる箇所、効かせたい面が分かる図面を共有します。処理範囲、要求される強さの指示方法、面粗さへの影響について確認したいです。

よくある質問

相談前によく聞かれること

ブラストと何が違うのですか。

目的が違います。ブラストは汚れやスケールを落とす処理、ショットピーニングは疲労強度を上げる処理です。見た目は似ていますが別物です。

「ショットピーニング」とだけ指示すれば伝わりますか。

条件は決まりません。効かせたい面、要求される強さ、管理方法を指示してください。当たっていない箇所には効果がありません。

面が粗くなりますか。

細かいディンプル状になり、面粗さは粗くなります。摺動面や外観面は処理範囲から外すか、後工程を検討してください。

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