表面処理の基礎

ブラストと研磨:削って整える表面処理

ブラストや研磨は、何かを乗せる処理ではありません。表面を削る、叩く、磨くことで状態を変えます。めっきや塗装の前処理として使われることも、それ自体が最終仕上げになることもあります。目的が違えば、指示すべきことも変わります。

ブラスト処理された梨地の部品と研磨された鏡面の部品を比較する検査台のイメージ

この処理の基本

乗せない処理だからこそ、面粗さで指示する

ブラストは表面を粗くする

研削材を高速で吹き付けて、表面のスケール、錆、バリ、鋳肌を落とします。同時に、表面が細かい凹凸のある状態(梨地)になります。

この凹凸は、塗装の密着を上げる足がかりになります。塗装前のブラストが一般的なのはこのためです。一方で、梨地そのものを意匠として使うこともあります。「ブラストしてほしい」だけでは、前処理なのか仕上げなのか伝わりません。

研削材の種類と粒度で、仕上がる面の粗さが変わります。鋼球、アルミナ、ガラスビーズなどがあり、母材や目的で選びます。求める面粗さと目的を伝えてください。

ショットピーニングは目的が違う

見た目はブラストと似ていますが、ショットピーニングは表面を叩いて圧縮の残留応力を与え、疲労強度を上げることが目的です。汚れを落とすためではありません。

ばね、歯車、軸など、繰り返し荷重がかかる部品で使われます。「表面をきれいにする処理」と混同しないでください。要求が疲労強度なのか、清浄なのかで、まったく別の指示になります。

研磨は表面を滑らかにする

バフ研磨や電解研磨は、逆に表面を滑らかにします。光沢を出す、汚れが付きにくくする、摩擦を下げる、といった目的で使われます。

研磨は素地を削るため、寸法が減ります。公差が厳しい箇所や、エッジの形状が機能を持つ部品では、どこまで削ってよいのかを指示する必要があります。角が丸くなって困る箇所は、先に伝えてください。

指示は「面粗さ」でする

ブラストも研磨も、仕上がりを言葉で伝えるのが難しい処理です。「きれいに」「梨地で」だけでは揃いません。

求める面粗さを数値で指示するか、限度見本で合わせるのが確実です。特に量産では、ロット間で見え方が変わるため、承認の基準を先に決めておいてください。

確認する項目

ブラスト・研磨で決めること

何のために表面を変えるのか。目的が決まらないと、条件も検査基準も決まりません。

観点曖昧なままだと起きること候補先に伝える情報
目的前処理か、仕上げか、疲労強度かで別処理になる塗装下地、意匠、疲労強度のどれか
面粗さ言葉では揃わない面粗さの数値、限度見本
研削材種類と粒度で仕上がりが変わる母材、求める粗さ、残留の可否
寸法研磨は素地を削る公差が効く箇所、エッジの扱い
母材材質で使える研削材が変わる材質記号、薄板や変形しやすい形状
後工程処理後にめっきや塗装が入るか後工程、保管期間、錆止めの要否

チェックリスト

問い合わせ前に手元で揃えておくもの

処理の目的(前処理・仕上げ・疲労強度)

母材と材質記号

求める面粗さ、または限度見本

公差が効く箇所とエッジの扱い

薄板や変形しやすい形状の有無

後工程(めっき、塗装)の有無

処理後の保管期間と錆止めの要否

量産時の承認基準

すべて埋めてから相談する必要はありません。未確定の項目は「未定」「現行品に合わせたい」「顧客指定を確認中」と書けば十分です。 空欄にするより、分からない項目として共有した方が、処理可否と追加確認を早く切り分けられます。

相談文の例

ブラスト・研磨の相談メモ

そのままコピーして、図面や写真を添えて送れる文面です。

ブラストまたは研磨を検討しています。母材、処理の目的(前処理か仕上げか)、求める面粗さ、公差が効く箇所を共有します。研削材の選択、寸法への影響、限度見本の作り方について確認したいです。

よくある質問

相談前によく聞かれること

ブラストとショットピーニングは同じですか。

見た目は似ていますが目的が違います。ブラストは汚れやスケールを落とし面を粗くする処理、ショットピーニングは疲労強度を上げる処理です。要求から選んでください。

「梨地にしてほしい」で伝わりますか。

伝わりません。研削材の種類と粒度で見え方が変わります。面粗さの数値か限度見本で合わせてください。

研磨で寸法は変わりますか。

素地を削るため減ります。公差が厳しい箇所や、エッジが機能を持つ箇所は先に指示してください。

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