なぜ時間差で起きるのか
めっき工程で発生した水素が鋼の内部に侵入し、応力が集中する箇所に集まります。組み付けて荷重がかかった状態で、時間をかけて内部で進行し、あるとき突然割れます。
厄介なのは、処理直後の外観検査や寸法検査では何も異常が見つからないことです。納入検査を通り、組み立てられ、出荷されたあとに割れる。この時間差が、水素脆性が怖い理由です。
処理の基礎
電気めっきの工程では、部品の表面で水素が発生します。この水素が鋼の内部に入り込むと、高強度材や熱処理品では、しばらく経ってから突然割れることがあります。これが水素脆性です。図面に材質や強度区分が書かれていないために、対策されないまま処理されるという事故が起きます。

この処理の基本
めっき工程で発生した水素が鋼の内部に侵入し、応力が集中する箇所に集まります。組み付けて荷重がかかった状態で、時間をかけて内部で進行し、あるとき突然割れます。
厄介なのは、処理直後の外観検査や寸法検査では何も異常が見つからないことです。納入検査を通り、組み立てられ、出荷されたあとに割れる。この時間差が、水素脆性が怖い理由です。
一般に、硬さや強度が高い部品ほどリスクが高くなります。高強度ボルト、ばね、熱処理品、高炭素鋼の部品などが対象になります。一方、一般的な鋼板の板金部品では、通常は問題になりません。
つまり、処理先が材質と強度区分を知らなければ、対策が必要かどうかを判断できません。図面に材質記号だけあって強度区分が抜けている、熱処理の指示が別図にある、といった状態は危険です。
対策として、めっき後に加熱して、侵入した水素を追い出す処理を行います。これがベーキングです。効果を得るには、めっき後できるだけ早く行う必要があるとされています。
ベーキングの温度と時間は、母材の熱処理条件を超えないように決める必要があります。焼き戻し温度を超えれば、強度そのものが落ちます。母材の熱処理履歴を処理先へ伝えてください。
水素脆性のリスクが高い部品では、電気めっき以外を選ぶという判断もあります。溶融亜鉛めっきや、水素が発生しにくい処理、塗装系への変更などが検討されます。
リスクの高い部品では、処理の選定段階から材質と強度区分を共有してください。「めっきしてから割れた」という段階では、対策の選択肢が大きく狭まります。
確認する項目
材質と強度が分からなければ、処理先は判断できません。図面に何を書くかの問題でもあります。
| 観点 | 曖昧なままだと起きること | 候補先に伝える情報 |
|---|---|---|
| 材質・強度 | 処理先が知らなければ対策できない | 材質記号、強度区分、硬さ |
| 熱処理 | 焼き戻し温度を超えると強度が落ちる | 熱処理履歴、許容される加熱条件 |
| ベーキング | 遅れると効果が下がるとされる | めっき後どれだけ早く行うか、温度と時間 |
| 処理方式 | 電気めっき以外の選択肢もある | 溶融亜鉛、塗装系への変更可否 |
| 用途 | 荷重がかかる部位ほどリスクが高い | 組付け荷重、締付けトルク、使用条件 |
チェックリスト
材質記号と強度区分
硬さと熱処理履歴
許容できる加熱条件(焼き戻し温度)
ベーキングの要否と実施タイミング
組付け時の荷重と締付けトルク
過去に割れが起きた履歴
電気めっき以外の選択肢の可否
検査資料の要否
すべて埋めてから相談する必要はありません。未確定の項目は「未定」「現行品に合わせたい」「顧客指定を確認中」と書けば十分です。 空欄にするより、分からない項目として共有した方が、処理可否と追加確認を早く切り分けられます。
相談文の例
そのままコピーして、図面や写真を添えて送れる文面です。
高強度部品への電気めっきを検討しています。材質記号、強度区分、熱処理履歴、組付け条件を共有します。水素脆性のリスク、ベーキングの要否と条件、電気めっき以外の選択肢について確認したいです。
よくある質問
高強度ボルト、ばね、熱処理品など、硬さや強度が高い部品でリスクが高くなります。一般的な鋼板の板金部品では通常問題になりません。
リスクを下げる対策ですが、絶対ではありません。処理後できるだけ早く行うこと、母材の熱処理条件を超えない温度で行うことが前提です。リスクが高い部品では処理そのものの選び直しも検討してください。
材質記号、強度区分、熱処理の有無と履歴、許容できる加熱条件を明記してください。これらが抜けていると、処理先は対策の要否を判断できません。
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