図面指示

表面処理の図面指示で確認すること

表面処理の図面指示は、処理名だけでは不足します。処理範囲、膜厚と測定位置、ねじ部、処理後寸法、外観面、検査資料を分けて書き、決まっていない項目は決まっていないと分かる形で残します。

図面、現物サンプル、測定具を並べて表面処理の指示内容を確認する机上

この処理の基本

図面に何を、どこに書くか

処理名は「どの処理か」しか決めていない

図面に「電気亜鉛めっき、三価クロメート」と書けば、処理の種類は決まります。しかし処理先が知りたいのはその先です。どこまで処理するのか、膜厚はどこで測った値なのか、ねじ部はどう扱うのか。書かれていなければ、処理先は自社の標準で埋めるしかありません。

埋め方は処理先ごとに違います。同じ図面を3社に送っても、見積の前提が3通りになります。安い見積が本当に安いのか、条件を落としているだけなのかを比べられません。

図面のどこに書くかで、伝わり方が変わる

表面処理の指示は、表題欄の注記だけでは完結しません。処理しない範囲は形状に斜線で示し、膜厚の測定位置は部位を指して書きます。ねじ部の扱いと、寸法が処理前なのか処理後なのかは、その寸法の近くに書かないと読み飛ばされます。

下の図は、Lアングルを例に4箇所を書き分けたものです。番号は右の注記と対応しています。

決められない項目は、空欄ではなく「相談」と書く

膜厚も後処理も、社内で決めきれないことがあります。そのとき図面を空欄にすると、処理先は「指定なし=標準でよい」と読みます。あとから「思っていたものと違う」となる典型がこれです。

決まっていない項目は、決まっていないと分かる形で残します。「顧客指定を確認中」「現行品に合わせる」と書いてあれば、処理先は先にそこを聞いてきます。量産に入る前に潰せる行き違いです。

図面のどこに、何を書き分けるか

処理名だけでは決まりません。処理範囲、膜厚の測定位置、ねじ部、処理後寸法を分けて指示します。

図面指示例
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  1. 1
    処理範囲

    全体処理か部分処理かを分ける。接点、圧入部、溶接予定箇所は「処理しない範囲」として図面に明示する。

  2. 2
    膜厚と測定位置

    膜厚は部位によって付き方が変わる。どこで測った値を保証するのかを決めないと、合否が揃わない。

  3. 3
    ねじ部

    めっき厚のぶんだけねじは渋くなる。処理後にゲージで確認するのか、マスキングするのかを先に決める。

  4. 4
    処理後の寸法

    公差が厳しい箇所は、図面の寸法がめっき前なのか後なのかを明記する。ここが曖昧だと必ず揉める。

確認する項目

図面指示の確認項目

処理先が判断しやすいように、固定条件と相談条件を分けます。

観点曖昧なままだと起きること候補先に伝える情報
処理範囲全体処理か部分処理かが曖昧になり、圧入部や接点にも皮膜が乗る。斜線部、処理不要箇所、その理由(圧入・導通・溶接)
膜厚と測定位置膜厚は部位で変わるため、測る場所が違えば合否も変わる。指定値、測定箇所、最小値か平均値か
ねじ部めっき厚のぶんねじが渋くなり、組付けで初めて分かる。処理後のゲージ確認、マスキング、下穴の扱い
処理後の寸法図面寸法が処理前か処理後か分からず、公差の解釈が割れる。処理後寸法で管理する箇所と、その公差
後処理・色調同じ「クロメート」でも色調と提出資料が変わる。三価か六価か、限度見本、環境資料の要否
外観面と検査資料治具跡や色ムラの合否判断が処理先ごとにずれる。見える面、隠れる面、限度見本、検査成績書の要否

チェックリスト

問い合わせ前に手元で揃えておくもの

処理名と後処理(三価・六価・色調)

材質と強度区分(ベーキングの要否に関わる)

処理する範囲と、処理しない範囲およびその理由

膜厚の指定値と、どこで測るか

図面寸法が処理前か処理後か

外観面の指定と、検査資料の要否

すべて埋めてから相談する必要はありません。未確定の項目は「未定」「現行品に合わせたい」「顧客指定を確認中」と書けば十分です。 空欄にするより、分からない項目として共有した方が、処理可否と追加確認を早く切り分けられます。

相談文の例

図面指示の相談メモ

そのままコピーして、図面や写真を添えて送れる文面です。

添付図面の表面処理指示について確認をお願いします。処理範囲(斜線部は処理不要)、膜厚の測定位置、ねじ部の扱い、処理後寸法の解釈に不足がないかを見ていただき、貴社の標準で埋めている前提があればあわせて教えてください。

よくある質問

相談前によく聞かれること

処理名だけ書いた図面でも見積は取れますか。

概算の相談はできます。ただし膜厚、処理範囲、後処理が書かれていないと、処理先は自社標準で前提を埋めるため、複数社の見積を横並びで比較できません。

膜厚の測定位置は、どこまで細かく書くべきですか。

全部位を指定する必要はありません。機能上ゆずれない部位(防錆を担う面、はめあい部)だけを指定し、それ以外は指定しないと分けて書くのが実務的です。

古い図面に六価クロメートと書かれています。そのまま出してよいですか。

そのまま出す前に、仕向け先と顧客のグリーン調達基準を確認してください。国内では設備側の制約から、規制上は可能でも処理先が見つからないことがあります。

処理後寸法は必ず書く必要がありますか。

公差が厳しい箇所と、ねじ・はめあい部だけで十分です。すべてを処理後寸法で管理すると、処理先の負担と価格が上がります。

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