処理の基礎

電気亜鉛めっきとは:仕組みと防錆の考え方

電気亜鉛めっきは、鉄部品の防錆でもっとも広く使われる処理です。ただし「亜鉛で覆って錆を防ぐ」という理解だけでは、なぜクロメートが必要なのか、なぜ白錆が出るのかが説明できず、外注先との会話が噛み合わなくなります。

電気亜鉛めっき後の銀白色の金属部品が治具に掛かったイメージ

この処理の基本

亜鉛は「覆う」のではなく「身代わりになる」

犠牲防食という仕組み

亜鉛は鉄よりも先に腐食する金属です。鉄の表面を亜鉛で覆うと、傷が入って鉄が露出しても、周囲の亜鉛が先に溶けることで鉄の腐食を抑えます。これを犠牲防食と呼びます。

塗装のように「膜で物理的に遮断する」処理とは考え方が違います。塗装は膜が破れればその場所から錆びますが、亜鉛めっきは多少の傷なら周囲の亜鉛が身代わりになります。傷や打痕が避けられない部品で亜鉛めっきが選ばれるのは、この性質があるためです。

なぜクロメート(後処理)が要るのか

亜鉛は身代わりになる金属なので、亜鉛そのものは腐食します。めっきしただけの亜鉛は空気中の湿気で白い腐食生成物を生じます。これが白錆です。白錆は鉄が錆びているわけではありませんが、外観不良になり、進行すれば亜鉛が消耗して防錆力そのものが落ちます。

そこで、亜鉛の表面にさらに化成皮膜を作って、亜鉛自体の腐食を遅らせます。これがクロメート処理です。「電気亜鉛めっき」とだけ図面に書かれていて後処理の指定がない場合、防錆性能が決まりません。処理名と後処理は必ずセットで指定してください。

薄膜であることの利点と制約

電気亜鉛めっきの皮膜は薄く、寸法への影響を抑えられます。ねじ、板金部品、小物部品のように公差が効く部品で使いやすいのはこのためです。

一方で、皮膜が薄いということは、屋外の厳しい環境や長期の防錆には限界があるということでもあります。屋外の構造物や大型鋼材では、より厚い皮膜が得られる溶融亜鉛めっきが候補になります。求める防錆の期間と使用環境を先に決めてから、処理を選んでください。

高強度材では水素脆性に注意する

電気めっきの工程では、部品の表面で水素が発生します。この水素が鋼の内部に入り込み、高強度材や熱処理品では、時間が経ってから突然割れる水素脆性という現象を起こすことがあります。

対策として、めっき後に加熱して水素を追い出すベーキングを行います。高強度ボルト、ばね、熱処理品を扱う場合は、材質と強度区分を必ず処理先へ伝えてください。図面に書かれていないために、ベーキングなしで処理されるという事故が起きます。

確認する項目

電気亜鉛めっきを選ぶときに決めること

処理名だけでは防錆性能も外観も決まりません。後処理、膜厚、部位の扱いを分けて決めます。

観点曖昧なままだと起きること候補先に伝える情報
後処理指定がないと防錆性能と色が決まらない三価か六価か、有色か光沢か、シーラーの要否
膜厚厚くすればねじや圧入部の寸法に影響する必要な防錆期間、測定箇所、公差が効く部位
ねじ・圧入部皮膜の厚みで組付けが渋くなるねじ精度、処理後ゲージ確認、マスキングの要否
材質・強度高強度材はベーキングなしで割れることがある材質記号、強度区分、熱処理の有無
処理方式小物か外観重視かで方式が変わる部品サイズ、数量、外観面、治具跡の許容

チェックリスト

問い合わせ前に手元で揃えておくもの

母材と材質記号

強度区分・熱処理の有無

希望する後処理(三価・六価・色)

膜厚と測定箇所

ねじ部、圧入部、摺動部の有無

使用環境と必要な防錆期間

外観面と白錆の許容基準

数量と処理方式(バレル・ラック)

すべて埋めてから相談する必要はありません。未確定の項目は「未定」「現行品に合わせたい」「顧客指定を確認中」と書けば十分です。 空欄にするより、分からない項目として共有した方が、処理可否と追加確認を早く切り分けられます。

相談文の例

電気亜鉛めっきの相談メモ

そのままコピーして、図面や写真を添えて送れる文面です。

電気亜鉛めっきを検討しています。材質、強度区分、使用環境、必要な防錆期間を共有しますので、後処理の選択、膜厚、ねじ部の扱い、ベーキングの要否について確認したいです。

よくある質問

相談前によく聞かれること

電気亜鉛めっきだけでは錆びますか。

亜鉛自体が腐食して白錆を生じます。クロメートなどの後処理で亜鉛の腐食を遅らせるのが一般的です。後処理の指定がない図面は、防錆性能が決まっていない状態です。

溶融亜鉛めっきとの違いは何ですか。

皮膜の厚みと寸法への影響が大きく違います。電気亜鉛は薄く寸法影響が小さい一方、屋外の長期防錆では溶融亜鉛が候補になります。用途と公差から選んでください。

ベーキングは必ず必要ですか。

すべての部品で必要なわけではありません。高強度材、熱処理品、ばね材などで検討します。材質と強度区分を処理先へ伝えて判断してください。

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