規制と適用範囲

六価クロムの規制と、まだ六価が必要とされる場面

六価クロムは各国の規制で制限されていますが、あらゆる製品で一律に使えないわけではありません。適用される指令、仕向け先、用途、適用除外の有無で判断が変わります。一方で、扱える処理業者が減っているという現実的な制約もあります。

クロメート処理された部品と検査資料を突き合わせるイメージ

この処理の基本

「使えない」と決める前に、何が決めているのかを分ける

制限しているのは何か

六価クロムを制限しているのは、電気電子機器を対象とするRoHS指令、自動車を対象とするELV指令、EU域内での使用に認可を求めるREACH規則などです。これらは製品カテゴリと仕向け先によって適用が決まります。

したがって、国内向けの一般産業機械、建設機械、一部の補修部品など、これらの適用範囲外にある製品では、現在も六価が使われています。「六価は禁止された」という一般論だけで自社の案件を判断すると、使える選択肢を自ら捨てることになります。

ただし、法規制で可能でも、顧客独自のグリーン調達基準や禁止物質リストで不可とされている場合があります。法規制と顧客要求は別に確認してください。可否の最終判断は、必ず一次情報と顧客への確認で行ってください。このページは判断の手順を示すもので、法的な助言ではありません。

処理業者側の制約

日本国内では、六価クロム化合物が労働安全衛生法にもとづく特定化学物質に該当します。処理業者には局所排気装置、作業環境測定、健康診断などの管理が求められ、廃液処理の負担も大きくなります。

その結果、六価の設備を維持している処理業者は年々減っています。「規制上は使えるはずなのに、対応できる業者が見つからない」という状況が起きるのはこのためです。仕様として六価を選ぶ場合は、処理先の確保まで含めて成立するかを先に確認する必要があります。

発注者が確認する順番

最終製品の製品カテゴリと仕向け先を確認する。次に、適用される指令と適用除外の有無を確認する。次に、顧客のグリーン調達基準を確認する。ここまでで六価が選択肢に残るかが決まります。

そのうえで、三価や代替処理で要求を満たせるかを検証します。満たせない場合に初めて、六価に対応できる処理先があるかを探すことになります。この順番で潰しておくと、「使えない処理を前提に設計していた」「仕様は決まったが処理できる先がない」という手戻りを避けられます。

「三価で満たせる」という前提を検証する

スペック表や社内標準に「三価で置き換え可」と書かれていても、その根拠が平らな試験片での試験結果である場合があります。実際の部品は、エッジ、打痕、治具跡、組付け時の擦れなど、皮膜が損傷する箇所を持っています。

三価には六価のような自己修復性がないため、これらの箇所から腐食が進むことがあります。要求を満たせるかどうかは、実部品に近い条件で確認してください。書類上は成立しているのに市場で錆びる、という事態はここから生まれます。

確認する項目

六価が使えるかを判断するために確認する場所

「六価は禁止」という一言では判断できません。どこを見れば可否が決まるのかを分けて確認します。

確認する場所見るもの判断がずれると起きること
製品カテゴリ電気電子機器か、自動車か、産業機械か適用される指令が変わる。前提を間違えると設計ごと巻き戻る
仕向け先国内向けか、EU向けか、その他か同じ部品でも輸出先によって可否が変わる
顧客基準グリーン調達基準、禁止物質リスト、顧客指定法規制上は可能でも顧客要求で不可になることがある
適用除外対象となる指令に適用除外の規定があるか使えるはずの用途を自主的に諦めてしまう
処理先六価に対応できる設備を持つ業者があるか仕様は決まったのに、処理できる先が見つからない
代替の成否三価や他処理で実部品の要求を満たせるか試験片では通り、実部品で錆びる

チェックリスト

問い合わせ前に手元で揃えておくもの

最終製品の製品カテゴリ

仕向け先(国内・EU・その他)

適用される指令と適用除外の有無

顧客のグリーン調達基準・禁止物質リスト

現行品が六価か三価か

三価や代替処理で満たせない具体的な要求

六価に対応できる処理先の有無

提出が必要な環境資料

すべて埋めてから相談する必要はありません。未確定の項目は「未定」「現行品に合わせたい」「顧客指定を確認中」と書けば十分です。 空欄にするより、分からない項目として共有した方が、処理可否と追加確認を早く切り分けられます。

相談文の例

六価の可否を確認するときの相談メモ

そのままコピーして、図面や写真を添えて送れる文面です。

六価クロメートの採用可否を検討しています。最終製品の仕向け先と製品カテゴリ、顧客のグリーン調達基準を共有します。三価で満たせなかった要求と、その根拠になった不具合の状況も併せて伝えますので、代替案と、六価を選ぶ場合の処理先の見通しについて相談したいです。

よくある質問

相談前によく聞かれること

六価クロメートはもう使えないのではないですか。

製品カテゴリと仕向け先によります。RoHSやELVの適用範囲外の製品では現在も使われています。ただし顧客のグリーン調達基準で禁止されている場合があるため、法規制と顧客要求の両方を確認してください。

規制上は問題ないのに、業者が断ってきます。

六価クロム化合物は特定化学物質に該当し、処理業者側に排気設備や作業環境測定などの管理が求められます。設備を維持している業者が減っているため、対応可否は業者ごとに確認が必要です。

三価では要求を満たせないと分かりました。次に何をしますか。

処理を六価に戻す以外にも、シーラーの追加、亜鉛ニッケルへの変更、塗装との複合など複数の選択肢があります。どこで錆びているかを切り分けたうえで比較してください。

環境資料は何を求められますか。

求められる資料は顧客と仕向け先によって変わります。必要な提出物を先に確認しておくと、見積の回答時間が短くなります。

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