品質の確認

カチオン電着塗装の膜厚で確認すること

電着の膜厚は電気量で作るため、複雑形状でも比較的揃います。ただしエッジと奥まった面は別です。どの部位の膜厚を保証するのか、下塗りなのか単独仕上げなのかを先に決めます。

カチオン電着塗装ラインを流れる黒色部品と、膜厚を確認する検査工程

この処理の基本

電着の膜厚は、どうやって決まっているのか

電着の膜厚は、電気量で決まる

電着塗装は、部品を塗料の液に浸けて電気を流し、塗膜を析出させます。膜が付くと絶縁層になり、そこには電流が流れにくくなるため、次は膜の薄いところに付きます。この性質があるので、膜厚が自然に揃い、袋部や隙間にも塗料が回ります。

吹付けのように「厚く塗る/薄く塗る」を人が加減する工程ではありません。膜厚は電圧と時間で作ります。だから同じ条件で流せば、ロット間の再現性は高くなります。

それでも、エッジと奥まった面では違う

均一といっても限度があります。鋭いエッジは塗膜が薄くなりやすく、そこから錆びます。逆に、電流が届きにくい奥まった内面も、外面と同じ膜厚にはなりません。

「どこの膜厚を保証するのか」を決めてください。全部位で同じ値を要求すると、実質的に満たせない指定になります。防錆を担う面と、外観面と、それ以外を分けて考えます。

下塗りなのか、これで仕上げなのかで基準が変わる

カチオン電着を防錆の下塗りとして使い、上に別の塗装を乗せるのか。それとも電着だけで仕上げるのか。この違いで、要求すべき膜厚も外観基準も変わります。

下塗りなら、上塗りとの密着と総膜厚が論点です。単独仕上げなら、外観と耐候性(紫外線で劣化しやすい)が論点になります。どちらなのかを最初に伝えないと、処理先は判断できません。

確認する項目

膜厚確認の観点

どこの膜厚を保証するのかを決めないと、合否の判断が処理先ごとに変わります。

観点曖昧なままだと起きること候補先に伝える情報
用途(下塗り/仕上げ)要求すべき膜厚も外観基準も変わる。上塗りの有無、上塗り材、工程範囲
測定箇所エッジ、内面、外観面で値が違う。どこの値かで合否が変わる。膜厚を保証する部位、測定位置
エッジ塗膜が薄くなり、そこから錆びる。防錆要求が高いほど効く。鋭い稜線の有無、面取りの可否
吊り位置・治具跡接点には塗膜が付かない。そこが外観面だと問題になる。吊ってよい箇所、外観面の指定
総膜厚上塗りを乗せると寸法が変わる。はめあい部で効く。下塗り膜厚+上塗り膜厚、寸法公差
検査資料測定方法と点数が合わず、成績書が使えない。測定方法、点数、測定位置、提出頻度

チェックリスト

問い合わせ前に手元で揃えておくもの

下塗りか、単独仕上げか

上塗りする場合の上塗り材

防錆を担う面はどこか

膜厚を保証する部位と、その値

外観面と、治具跡を許容できる箇所

検査成績書の要否と測定方法

すべて埋めてから相談する必要はありません。未確定の項目は「未定」「現行品に合わせたい」「顧客指定を確認中」と書けば十分です。 空欄にするより、分からない項目として共有した方が、処理可否と追加確認を早く切り分けられます。

相談文の例

膜厚確認メモ

そのままコピーして、図面や写真を添えて送れる文面です。

カチオン電着塗装の膜厚について相談させてください。用途は◯◯(下塗り/単独仕上げ)で、上塗りは◯◯です。防錆を担うのは◯◯面、外観面は◯◯です。膜厚を保証する部位と測定方法について、貴社の標準を教えてください。エッジ部の膜厚が課題になるかどうかもあわせてお願いします。

よくある質問

相談前によく聞かれること

膜厚指定は必要ですか。

顧客要求と用途によります。下塗りなのか単独仕上げなのか、防錆を担う面はどこかを伝えれば、処理先から適切な範囲を提案してもらえます。

内面も外面と同じ膜厚になりますか。

電着はつきまわりが良いので他の塗装より揃いますが、完全に同じにはなりません。奥まった面が防錆を担うなら、その部位を指定してください。

エッジが錆びるのはなぜですか。

鋭い稜線では塗膜が薄くなるためです。面取りできるなら設計側で逃がすのが確実です。難しい場合は、エッジの膜厚要求を候補先と詰めてください。

電着だけで仕上げにできますか。

用途によります。紫外線で劣化しやすいため、屋外で意匠性が要る部品では上塗りを検討します。屋内や隠れる部品なら単独仕上げも選択肢です。

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