工程の確認

カチオン電着塗装を上塗り前提で使うときの確認項目

電着は防錆、上塗りは意匠と耐候性。役割が違うため、組み合わせて使います。上塗り材、密着、総膜厚、そしてどこまでを1社に任せるかを、外注前に分けて決めます。

カチオン電着塗装の工程を流れる部品と、上塗り工程の確認

この処理の基本

下塗りとして使うとき、何が論点になるか

電着は防錆、上塗りは意匠。役割が違う

カチオン電着塗装は、袋部や隙間まで塗料が回るため、防錆の下塗りとして強い処理です。一方で、紫外線に弱く、屋外で単独で使うと色があせて劣化します。色数も自由には選べません。

だから「防錆は電着、見た目と耐候性は上塗り」という組み合わせが成り立ちます。自動車の車体がこの構成です。どちらが何を担っているのかを分けて考えると、要求すべき条件が見えます。

密着は「相性」で決まる。試さないと分からない

電着の塗膜の上に、粉体や溶剤の塗料を乗せます。このとき、上塗りが下塗りに食い付くかどうかは、塗料の組み合わせと、下塗りの焼付け条件で変わります。焼き過ぎた電着塗膜は表面が硬くなり、上塗りが乗りにくくなることがあります。

上塗り材が決まっているなら、最初に伝えてください。決まっていないなら、それも伝えてください。処理先が下塗りの条件を上塗りに合わせられます。塗ってから密着不良が出ると、剥離して塗り直しになります。

工程を分けると、責任の境目が消える

下塗りをA社、上塗りをB社に出すと、密着不良が出たときに原因の切り分けができません。A社は「上塗りの問題」と言い、B社は「下地の問題」と言います。どちらも証明できません。

1社で通せるなら、そのほうが揉めません。分けざるを得ないなら、下塗りの膜厚と焼付け条件、受け入れ時の確認方法を、両社の間で先に決めておきます。ここを決めずに走ると、必ず後で止まります。

確認する項目

上塗り前提の確認項目

単独仕上げか下塗りかで、品質基準も見積範囲も変わります。

観点曖昧なままだと起きること候補先に伝える情報
工程範囲下塗りまでか上塗りまでかで、品質責任の所在が変わる。どこまでを1社に任せるか
上塗り材下塗りとの相性で密着が変わる。剥離すると塗り直しになる。上塗りの塗料種、メーカー、色
焼付け条件電着を焼き過ぎると、上塗りが乗りにくくなる。下塗りの焼付け温度・時間
総膜厚下塗り+上塗りで寸法が動く。はめあい部で効く。各層の膜厚、公差の厳しい部位
外観基準下塗りの外観と、最終外観の基準が混ざる。どの段階で何を見るか、限度見本
受け入れ確認工程を分けた場合、不具合の原因が切り分けられない。中間受け入れの検査項目と合格基準

チェックリスト

問い合わせ前に手元で揃えておくもの

上塗りするかどうか

上塗り材(塗料種・メーカー・色)

どこまでを1社に任せるか

下塗りの膜厚と焼付け条件

総膜厚と、公差の厳しい部位

最終外観の基準と限度見本

すべて埋めてから相談する必要はありません。未確定の項目は「未定」「現行品に合わせたい」「顧客指定を確認中」と書けば十分です。 空欄にするより、分からない項目として共有した方が、処理可否と追加確認を早く切り分けられます。

相談文の例

上塗り前提の相談メモ

そのままコピーして、図面や写真を添えて送れる文面です。

カチオン電着塗装を防錆下塗りとして検討しています。上塗りは◯◯(塗料種・色)を予定しており、上塗り工程は◯◯(貴社/別社)です。下塗りの膜厚と焼付け条件、上塗りとの密着確認の要否、総膜厚が寸法に与える影響について教えてください。試験片での密着確認ができるかもあわせてお願いします。

よくある質問

相談前によく聞かれること

カチオンだけで仕上げにできますか。

屋内や隠れる部品ならできます。屋外で意匠性が要る部品では、紫外線で劣化するため上塗りを検討してください。

上塗りまで同じ会社に頼むべきですか。

1社で通せるなら、そのほうが密着不良の切り分けで揉めません。分ける場合は、下塗りの条件と中間受け入れの基準を両社間で先に決めてください。

密着は事前に確認できますか。

試験片で確認できる場合があります。塗料の組み合わせが初めてなら、量産前に試すことを勧めます。剥離が量産で出ると、全数塗り直しになります。

上塗りするなら、下塗りの膜厚は薄くてよいですか。

防錆を担うのは下塗り側です。上塗りは意匠と耐候性を担うため、下塗りを薄くすると防錆性能が落ちます。役割を混ぜないでください。

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