処理の基礎

溶剤塗装とは

溶剤塗装は、溶剤に溶かした塗料を吹き付けて乾燥させる塗装です。色や艶の自由度が高く、少量にも対応しやすく、補修がしやすいのが特徴です。一方で、防錆を塗膜だけに任せると弱くなるため、下地をどう作るかが要点になります。

塗装された金属部品の色調と艶を比較する検査台のイメージ

この処理の基本

意匠と少量対応に強く、防錆は下地で決まる

色、艶、質感の自由度

調色がしやすく、艶の調整、メタリック、複層仕上げなど、意匠の要求に応えやすいのが溶剤塗装の強みです。少量、多色、試作、特注色といった案件で選ばれます。

また、傷が入ったときの部分補修がしやすいという利点もあります。大型の機械や設備で、現地補修が必要な場合には重要な条件になります。

防錆は下地で決まる

塗膜は物理的に遮断する膜です。膜が破れれば、そこから錆びます。亜鉛めっきのような犠牲防食は働きません。

したがって、防錆が必要な部品では、塗装の前に何を入れるかが決定的です。化成処理、防錆プライマー、カチオン電着塗装の下塗りなどを検討します。「塗ってあるから錆びない」という前提は成立しません。屋外や塩害環境では、下地の設計から相談してください。

膜厚と乾燥の管理

吹き付けた塗料が垂れないよう、厚く塗る場合は塗り重ねが必要になります。膜厚の管理、乾燥時間、乾燥設備の条件が、そのまま納期と品質に効きます。

また、粉体塗装のような高温焼付を必要としない塗料もあるため、熱に弱い素材や組立後の製品でも選択肢になります。素材の耐熱条件から塗装方式を選ぶ、という考え方もできます。

確認する項目

溶剤塗装で確認すること

意匠の要求と、防錆をどこで確保するかを分けて決めます。

観点曖昧なままだと起きること候補先に伝える情報
下地塗膜だけでは防錆が持たない化成処理、プライマー、電着下塗りの要否
色・艶調色の自由度が高い反面、基準が必要色番号、艶、限度見本、承認方法
膜厚厚くするには塗り重ねが要る必要膜厚、測定箇所、乾燥条件
数量少量や多色に対応しやすい数量、色数、試作か量産か
素材高温焼付が不要な塗料も選べる材質、熱に弱い部品の有無、組立状態
補修現地補修が可能かで運用が変わる補修の想定、塗料の入手性

チェックリスト

問い合わせ前に手元で揃えておくもの

母材と材質記号

使用環境と必要な防錆性能

下地処理(化成処理、プライマー、電着下塗り)の要否

色番号、艶、限度見本

必要膜厚と測定箇所

数量と色数

単品か組立後か

現地補修の想定

すべて埋めてから相談する必要はありません。未確定の項目は「未定」「現行品に合わせたい」「顧客指定を確認中」と書けば十分です。 空欄にするより、分からない項目として共有した方が、処理可否と追加確認を早く切り分けられます。

相談文の例

溶剤塗装の相談メモ

そのままコピーして、図面や写真を添えて送れる文面です。

溶剤塗装を検討しています。母材、使用環境、色と艶の要求、数量を共有します。防錆を確保するための下地処理、必要膜厚、限度見本の作り方について確認したいです。

よくある質問

相談前によく聞かれること

塗装してあれば錆びませんか。

塗膜が破れればそこから錆びます。亜鉛めっきのような犠牲防食は働きません。防錆が必要なら、下地に化成処理やプライマー、電着下塗りを検討してください。

粉体塗装とどちらを選ぶべきですか。

耐久性と厚膜なら粉体、色と意匠の自由度や少量多色なら溶剤が候補になります。数量、色数、素材の耐熱から判断してください。

色は指定どおりに出ますか。

調色は可能ですが、素材や下地、艶によって見え方が変わります。限度見本と承認方法を先に決めてください。

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