処理の基礎

硬質クロムめっきとは

硬質クロムめっきは、厚めのクロム皮膜を付けて硬度と耐摩耗性を得る処理です。シャフト、ロッド、金型、摺動部などに使われます。防錆や外観が目的の装飾クロムめっきとは、目的も膜厚も別のものです。

研磨されたシャフト状の金属部品を検査するイメージ

この処理の基本

硬さのための処理であり、防錆のための処理ではない

装飾クロムとは別のもの

「クロムめっき」という言葉は、自動車の外装のような光沢仕上げ(装飾クロム)と、摺動部の耐摩耗を狙う硬質クロムの両方を指してしまいます。図面に「クロムめっき」とだけ書かれていると、処理先はどちらか判断できません。

装飾クロムは下地にニッケルなどを重ねた上に極薄のクロムを乗せる処理で、目的は外観と防錆です。硬質クロムは厚みのあるクロム皮膜そのもので硬度を得ます。目的を明示してください。

寸法は後加工で追い込む前提

硬質クロムの皮膜は、そのままでは表面が粗く、厚みも均一にはなりません。エッジや角には厚く付き、電流が届きにくい箇所には薄くなります。

そのため、必要な寸法より厚めにめっきし、めっき後に研磨して寸法を出すのが一般的です。仕上げ寸法、研磨代、公差、面粗さを図面で分けて指示する必要があります。「めっき後の寸法」なのか「めっき前の寸法」なのかが曖昧なままだと、必ず揉めます。

マイクロクラックと防錆

硬質クロムの皮膜には微細なクラックが入ります。このクラックを通じて水分が下地に達するため、硬質クロムそのものには防錆を期待できません。

防錆が必要な場合は、下地に別の処理を入れる、あるいは使用環境で対策する、という設計が必要です。硬いから錆びない、という理解は誤りです。

六価クロム浴の規制と業者の減少

従来の硬質クロムめっきは六価クロムを含む浴で行われてきました。このため、規制と処理業者側の設備要件の影響を受けます。三価クロムを使う硬質クロムも登場していますが、特性や実績は従来浴と同じではありません。

仕向け先の規制、顧客のグリーン調達基準、対応できる処理先の有無を、仕様を固める前に確認してください。

確認する項目

硬質クロムめっきで決めること

膜厚をそのまま使う処理ではありません。後加工と寸法指示の前提を先に揃えます。

観点曖昧なままだと起きること候補先に伝える情報
目的装飾か硬質かで処理がまったく違う耐摩耗か、外観か、防錆か
寸法めっき前後どちらの寸法かで手戻りが起きる仕上げ寸法、研磨代、公差、面粗さ
後加工研磨を前提にするかで工程分担が変わる研磨の要否、どちらが実施するか
防錆皮膜のクラックから下地に水分が届く使用環境、下地処理の要否
規制六価クロム浴が制限を受ける場合がある仕向け先、顧客基準、対応可能な処理先
母材材質と熱処理で処理条件が変わる材質記号、硬度、熱処理履歴

チェックリスト

問い合わせ前に手元で揃えておくもの

装飾クロムか硬質クロムか

母材と熱処理履歴

仕上げ寸法と公差、面粗さ

研磨の要否と工程分担

使用環境と防錆要求

仕向け先の規制と顧客基準

部品サイズと数量

検査資料の要否

すべて埋めてから相談する必要はありません。未確定の項目は「未定」「現行品に合わせたい」「顧客指定を確認中」と書けば十分です。 空欄にするより、分からない項目として共有した方が、処理可否と追加確認を早く切り分けられます。

相談文の例

硬質クロムめっきの相談メモ

そのままコピーして、図面や写真を添えて送れる文面です。

硬質クロムめっきを検討しています。母材、仕上げ寸法と公差、面粗さ、使用環境を共有します。研磨の工程分担、防錆の要否、六価クロム浴に関わる規制と処理可否について確認したいです。

よくある質問

相談前によく聞かれること

硬質クロムなら錆びませんか。

錆びます。皮膜には微細なクラックがあり、水分が下地に達します。防錆が必要なら下地処理や使用環境での対策を別に検討してください。

図面に「クロムめっき」と書いてあります。

装飾クロムか硬質クロムかで処理も膜厚も違います。目的を明示してください。

寸法はめっき後に出ますか。

めっきしたままでは寸法が揃いません。研磨で仕上げるのが一般的です。図面の寸法がめっき前か後かを明記してください。

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