処理の基礎

アルマイト(陽極酸化)とは

アルマイトは、アルミの表面を電気化学的に酸化させて酸化皮膜を作る処理です。めっきのように別の金属を「乗せる」のではなく、素地そのものを変質させるため、寸法の考え方が根本的に違います。

アルミ部品の陽極酸化サンプルを色調ごとに比較する検査台のイメージ

この処理の基本

皮膜は乗るのではなく、素地から生える

寸法は増えるが、膜厚ぶんではない

アルマイトの皮膜は、素地のアルミが酸化してできます。素地を消費しながら、その一部が外側へ成長します。つまり、皮膜の一部は元の表面より内側にあり、一部は外側に張り出します。

結果として、外形寸法は膜厚のすべてぶんは増えず、おおよそ半分程度が外側に成長するとされています。穴は逆に小さくなります。はめあい、ねじ、ピン穴がある部品では、この寸法変化を織り込んで設計する必要があります。処理後の寸法を図面のどこで保証するのかを、先に決めてください。

合金種で色が変わる

同じアルマイト処理でも、アルミの合金種によって仕上がりの色が変わります。展伸材と鋳物、系統の違う合金では、同じ条件で処理しても色が揃いません。

特にダイカスト材は、シリコンなどの添加元素の影響で、皮膜が黒っぽくムラになりやすい傾向があります。複数の部品を組み合わせて色を揃えたい場合、材質を揃えるところから設計する必要があります。「同じアルマイトなのに色が違う」という相談の多くは、材質の違いが原因です。

白アルマイト、カラーアルマイト、硬質アルマイト

素地のままの色で仕上げるもの(一般にいう白アルマイト)、染料で着色するもの(カラーアルマイト)、厚く硬い皮膜を作るもの(硬質アルマイト)があります。目的が防食なのか、意匠なのか、耐摩耗なのかで選ぶものが変わります。

硬質アルマイトは皮膜が厚いため、寸法変化も大きくなります。耐摩耗を目的にする場合は、寸法の増え方をより慎重に見積もってください。

封孔処理と絶縁性

アルマイトの皮膜は多孔質です。そのままでは汚れや水分が入り込むため、孔を塞ぐ封孔処理を行うのが一般的です。着色したものは、封孔処理をしないと色落ちします。

また、酸化皮膜は電気を通しません。導通が必要な箇所、アース箇所、接点がある場合は、その部分をマスキングして処理しないようにする必要があります。「組み立てたら通電しない」という不具合は、この見落としから起きます。

確認する項目

アルマイトで決めること

素地を変質させる処理なので、寸法と材質が最初の論点になります。

観点曖昧なままだと起きること候補先に伝える情報
材質合金種で色と仕上がりが変わるアルミの合金記号、展伸材かダイカストか
寸法外形は増え、穴は小さくなるはめあい部、ねじ、ピン穴の公差
種類防食・意匠・耐摩耗で選ぶものが違う白、カラー、硬質のいずれか
材質が違うと同じ色に揃わない組み合わせる部品の材質、限度見本
導通皮膜は電気を通さないアース箇所、接点、マスキング範囲
封孔未封孔だと汚れや色落ちが起きる封孔処理の要否、使用環境

チェックリスト

問い合わせ前に手元で揃えておくもの

アルミの合金記号(展伸材・ダイカストの別)

アルマイトの種類(白・カラー・硬質)

はめあい部、ねじ、ピン穴の公差

処理後の寸法をどこで保証するか

導通が必要な箇所とマスキング範囲

組み合わせる部品との色合わせの要否

限度見本の有無

使用環境と封孔処理の要否

すべて埋めてから相談する必要はありません。未確定の項目は「未定」「現行品に合わせたい」「顧客指定を確認中」と書けば十分です。 空欄にするより、分からない項目として共有した方が、処理可否と追加確認を早く切り分けられます。

相談文の例

アルマイトの相談メモ

そのままコピーして、図面や写真を添えて送れる文面です。

アルミ部品のアルマイト処理を検討しています。合金記号、はめあい部の公差、導通が必要な箇所が分かる図面を共有します。寸法変化の見積もり、色の揃い方、マスキング範囲、封孔処理の要否について確認したいです。

よくある質問

相談前によく聞かれること

アルマイトで寸法はどれだけ増えますか。

膜厚のすべてが外側に付くわけではなく、おおよそ半分程度が外側に成長するとされています。実際の値は条件で変わるため、処理先と膜厚を決めたうえで確認してください。

同じアルマイトなのに色が違います。

アルミの合金種が違うと、同じ条件で処理しても色が揃いません。特にダイカスト材はムラが出やすい傾向があります。色を揃えたい場合は材質から揃えてください。

アルマイト面で通電できますか。

酸化皮膜は電気を通しません。アース箇所や接点はマスキングして処理しない範囲として指示してください。

鉄部品にアルマイトはできますか。

できません。アルマイトはアルミの表面を酸化させる処理です。鉄部品には別の処理を検討してください。

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